ドリルを売るには穴を売れレビュー|若手にすすめる理由

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ドリルを売るには穴を売れレビュー|若手にすすめる理由

「マーケティングに興味があるのですが、最初に読むなら何がおすすめですか?」

私が『ドリルを売るには穴を売れ』を読んだのは、CXコンサルとして働き始めた10年以上前です。マーケティングの基本的な考え方を理解するうえで、読んで良かったと感じた一冊でした。

今でも若手からおすすめの本を聞かれたとき、マーケティング関連の仕事はまだ経験していないけれど、これからやってみたいという人には、この本をすすめることがあります。

今回は、佐藤義典さんの『ドリルを売るには穴を売れ』について、入門書として良いと感じる理由と、CXの視点でも押さえておきたいポイントを紹介します。広告運用やサイト改善の細かなテクニックではなく、その手前にある「何を、誰に、どう届けるのか」を考えたい方に向けたレビューです。

『ドリルを売るには穴を売れ』の基本情報

項目内容
書名ドリルを売るには穴を売れ
副題誰でも「売れる人」になるマーケティング入門
著者佐藤義典
出版社青春出版社
出版年月日2007年1月10日〈出版社公式ページ表記〉
ページ数256ページ
判型四六判ソフトカバー
紙の定価1,815円(税込)
ISBN978-4-413-03623-8
私が読んだ時期CXコンサルとして働き始めた10年以上前
主なテーマベネフィット、ターゲティング、差別化、4P

こんな人におすすめ

マーケティングの仕事に興味があるものの、まだ経験がない方。専門用語を覚える前に基本的な考え方をつかみたい方。そして、広告やWeb施策を考える前に、顧客に届ける価値を整理したい方におすすめです。

10年以上前に読んで、今も若手にすすめる理由

最初に基本的な考え方をつかめたのが良かった

私にとって、この本の良さは、マーケティングの基本的な考え方が分かったことです。

マーケティングと聞くと、広告を出すこと、SNSで発信すること、商品を売り込むことなどを思い浮かべる方もいると思います。しかし、施策を考える前には、「顧客にとって何が価値になるのか」という問いがあります。

『ドリルを売るには穴を売れ』は、その問いを出発点に、誰に届けるのか、なぜ選ばれるのか、どう届けるのかを順番に考えられる構成です。

これからマーケティングを学ぶ段階では、個別の知識を大量に覚えるよりも、まず全体のつながりを理解できることに意味があると思います。

「未経験だけれど、やってみたい」という人に渡しやすい

若手から「何か良い本はありますか?」と聞かれたときも、相手の経験によってすすめる本は変わります。

すでに専門領域を持っている人と、これからマーケティングに触れる人では、必要な本が違うからです。

その点、この本は、マーケティング関連の仕事をまだ経験していないけれど、興味を持っている人への入口としてすすめやすいと感じています。

「まずこれを読めば何でもできる」という意味ではありません。実務に触れる前に、考えるための土台を持つ一冊として、ちょうど良いという位置づけです。

面白いと感じるポイントは、4つの考え方のつながり

本書では、ベネフィット、ターゲティング、差別化、4Pという4つの基本を扱います。出版社の紹介でも、これらを顧客にとっての「価値」を軸につないで説明する点が特徴とされています。

考え方考える問い
ベネフィット顧客は、どのような価値を得るのか
ターゲティングその価値を、誰に届けるのか
差別化他の選択肢ではなく、なぜ選ばれるのか
4P商品・価格・販路・販促を通じて、どう価値を届けるのか

1.商品の説明ではなく、顧客の価値から考える

タイトルの「ドリルを売るには穴を売れ」は、単に売り文句を工夫するという話ではありません。出版社は、「商品を売るには、顧客にとっての価値から考えよ」という意味だと説明しています。

ここが、最初に押さえておきたいポイントです。

たとえば、家族の写真を整理するサービスなら、「写真を大量に保存できる」という機能と、「忙しくても子どもの成長を振り返りやすい」という価値は、同じではありません。

前者はサービスができること、後者は利用する人にとってうれしいことです。

※写真整理サービスの例は、本書の考え方を説明するための一般例であり、書中の事例ではありません。

何ができる商品かだけでなく、それによって顧客に何がもたらされるのか。 この視点は、マーケティングを学ぶうえで大切な出発点だと思います。

2.「良い商品」を考える前に、「誰にとって良いか」を考える

顧客にとっての価値を考えるには、誰のことを考えているのかも明確にする必要があります。

本書の第2章では、セグメンテーションとターゲットを扱います。価値の話から、誰に届けるのかという話へ進む構成です。

たとえば、同じ飲食店でも、昼休みに短時間で食事を済ませたい人と、休日に家族でゆっくり過ごしたい人では、うれしいサービスが違います。

提供の速さが大きな価値になる場面もあれば、子どもと落ち着いて過ごせる環境が選ぶ理由になる場面もあります。

こう考えると、「もっと良いサービスにしよう」という言葉だけでは、方向が決まりません。誰にとっての良さなのかをそろえて、初めて具体的に考えられるのだと思います。

3.差別化は、単に他と違えば良いわけではない

本書では、ターゲットに続いて「あなたの商品でなければならない理由」を扱います。

私が入門書として良いと感じるのは、「顧客の価値」「誰に届けるか」の後に、選ばれる理由を考える流れです。

誰に何を届けるのかが曖昧なまま、競合との違いだけを増やしても、その違いが顧客に喜ばれるとは限りません。

たとえば、機能を増やすことが便利さにつながる人もいれば、操作が簡単なことを重視する人もいます。

差別化を「他社にはないもの探し」だけにしない。届けたい相手にとって、意味のある違いになっているかを考えることが重要だと感じます。

4.4Pを、別々のチェック項目にしない

4Pは、商品、価格、販路、販促という4つの観点です。本書では、「どのようにして価値を届けるか」という位置づけで扱われます。

用語だけを見ると、覚える項目が増えたように感じるかもしれません。しかし、ここまでの流れとつなげると、捉えやすくなります。

誰にどのような価値を届けるのかが決まれば、商品の内容だけでなく、価格や買える場所、伝え方にも整合性が必要になります。

広告だけ魅力的でも、実際の商品や購入体験が期待と合っていなければ、顧客に価値が届いたとは言いにくいでしょう。

それぞれの施策を個別に考えるのではなく、一つの価値を届けるためにつなげて考える。 基本を学ぶ段階で、この感覚を持てるのは良い点だと思います。

理論だけでなく、物語を通して理解できる

本書には、新人マーケターが閉店寸前のレストランを再生するサブストーリーがあります。理論の解説と並行して物語が進む構成です。

マーケティングの用語は、定義を読めば分かった気になっても、実際にはどう考えるのかがイメージしにくいことがあります。

物語があると、「なぜそこで顧客について考えるのか」「なぜ商品の良さだけでは足りないのか」という流れを追いやすくなります。

専門書を最初から読み切れるか不安な方にとっても、手に取りやすい構成だと思います。

CXコンサルの視点でも、基本として押さえておきたい

ここからは、本書の内容を踏まえた私なりの捉え方です。

CXでは、Webサイト、購入手続き、利用中のサポートなど、顧客とのさまざまな接点を考えます。その際にも、「その体験を通じて、顧客は何を得たいのか」という問いは外せません。

たとえば、問い合わせフォームの入力項目を減らすこと自体が、最終目的とは限りません。顧客が知りたいのは、「自分の困りごとが解決するのか」「安心して利用できるのか」ということかもしれません。

もちろん、入力のしやすさも大切です。ただ、接点の改善だけを見ていると、その先にある価値を見失う可能性があります。

本書をCXの専門書と捉える必要はありませんが、顧客にとっての価値から考える姿勢は、CXを考えるときの土台にもなると思います。

また、チームで話す際も、「誰の、どの価値について話しているのか」がそろっていないと議論がずれます。会議での整理の仕方については、会議が噛み合わない原因は「論点」がずれているからでも紹介しています。

読む前に知っておきたい点

最新のデジタル施策を学ぶ本ではない

本書は、広告管理画面の操作や最新のSNS運用、AIツールの使い方を学ぶための本ではありません。

目次も、ベネフィットやターゲットなど、マーケティングの基本を中心とした構成です。そのため、明日実行する施策の手順を探している場合には、別の実務書が必要になります。

一方で、今回私が紹介したいのは、まさにその手前の考え方です。施策を知る本と、施策の目的を考える本は、役割を分けると良いと思います。

経験者には、知っている内容も多い

マーケティングをすでに学んでいる方には、おなじみの用語が多いはずです。

その場合は、新しい理論を探すよりも、「基本を自分の言葉で説明できるか」「若手にどう伝えるか」を考えながら読むほうが合っていると思います。

私も、誰にでも一律にすすめるというより、未経験からマーケティングに入る方への一冊として位置づけています。

読むだけで、実務ができるようになるわけではない

考え方が分かることと、実際の顧客を理解して判断することは別です。

本書の枠組みを知った後も、顧客の声や行動、事業の状況を確かめる必要があります。自分たちに都合の良い「顧客が求めているはず」を作ってしまわないようにしたいところです。

入門書は、答えをすべて教えてくれるものではなく、何を問い、何を確かめるかを考えるための土台として読むのがおすすめです。

ほかの本と、どう使い分ける?

学びたいこと本の選び方
マーケティングの基本を初めて学びたい本書のように、顧客価値から基本理論をつないで学べる入門書
広告運用や分析の手順を知りたい扱う媒体・ツールに対応した、情報の新しい実務書
思考や情報の整理の仕方を学びたいマーケティング書とは別に、思考法・構造化を扱う本

たとえば、以前紹介した『構造化思考のレッスン』は、情報の捉え方や整理の仕方に関心がある方に向いた記事です。

マーケティングで考えるべき問いを学ぶ本と、考えを整理するための本。それぞれ違う役割があるので、今知りたいことに合わせて選ぶと良いと思います。

総合評価|未経験者の入口としてすすめやすい一冊

私自身の読書体験と、マーケティング未経験の若手にすすめる用途を基準にした評価です。

評価項目評価コメント
基本のつかみやすさ★★★★★マーケティングの出発点を理解する一冊としてすすめやすい
内容のつながり★★★★★顧客価値からターゲット、差別化、4Pへとつながる
初学者の読みやすさ★★★★★理論に物語が添えられ、具体的に捉えやすい構成
CXとの接続のしやすさ★★★★★顧客にとっての価値を考える土台になる
専門領域の掘り下げ★★★★☆基本を学ぶ本なので、専門実務は別の学習が必要
最初の一冊としてのすすめやすさ★★★★★マーケティング未経験で興味のある若手に紹介しやすい

総合評価:★★★★☆ (4.8/5.0)

最新施策を網羅した本としてではなく、マーケティングの基本を学ぶ入口として高く評価している一冊です。

まとめ|「マーケティングをやってみたい」人にすすめたい

『ドリルを売るには穴を売れ』の良さは、商品の説明や売り方の工夫に入る前に、顧客にとっての価値から考えられることです。誰に届け、なぜ選ばれ、どう価値を届けるのかを、つながりのあるものとして学べます。

私が読んだのは、CXコンサルとして働き始めた10年以上前でした。マーケティングの基本的な考え方が分かって良かったと感じた本で、今も未経験の若手から相談された際にすすめる一冊です。

これからマーケティングに触れてみたい方には、最初の候補にしてほしいと思います。考え方の整理にも関心がある方は、『構造化思考のレッスン』のレビューもあわせてご覧ください。

一緒に、商品ではなく「顧客にとっての価値」から考えていきましょう!


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