「最近読んだ本の中で、これは面白かった!」
そう感じた1冊が、石井遼介さんの『心理的安全性のつくりかた』でした。特定の問題を解決するために手に取ったわけではなく、日々の読書習慣の中で出会った本ですが、読み進めるうちに「この考え方、仕事だけじゃなく育児にも使えるのでは?」と気づきが次々と生まれました。
CXコンサルとして働きながら2人の娘を育てる私が、この本から得た学びと、子育て世代にとっての活用可能性をお伝えします。
心理的安全性のつくりかた 基本情報
書籍名: 心理的安全性のつくりかた
サブタイトル: 「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える
著者: 石井遼介
出版社: 日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)
発売日: 2020年9月1日
価格: 1,980円(税込)
ページ数: 336ページ
判型: 四六判
累計発行部数: 20万部突破(2025年6月時点)
受賞歴
こんな人におすすめ
- チームマネジメントに携わるリーダー・管理職
- リモートワークでのコミュニケーションに課題を感じている方
- 育児と仕事の両立で家庭内コミュニケーションを改善したい方
- 心理的安全性という概念を実践的に学びたい方
- 日々の読書で新たな視点を得たい方
この本を読んだきっかけ
日々の読書習慣の中で
正直に言うと、特定の問題を解決するために購入したわけではありません。日々の読書習慣の中で、「心理的安全性」というキーワードをよく目にするようになり、「ちゃんと理解しておきたいな」という純粋な興味から手に取りました。
購入前の状況
- 仕事で特に大きな問題があったわけではない
- 家庭内コミュニケーションも概ね良好
- ただ、「心理的安全性」という言葉がビジネス書界隈で頻繁に使われていた
- Googleの研究で注目を集めた概念をきちんと理解したかった
タイトルに惹かれた理由
「心理的安全性のつくりかた」というタイトルが秀逸でした。単なる概念説明ではなく、「つくりかた」=実践的な方法論が書かれていそうだと期待しました。
さらにサブタイトルの「心理的柔軟性が困難を乗り越えるチームに変える」という言葉に惹かれました。「心理的柔軟性」という聞き慣れない概念が、どう心理的安全性と関係するのか興味が湧きました。
本書の内容と特徴
心理的安全性とは何か
本書では、心理的安全性を以下のように定義しています:
「組織やチーム全体の成果に向けた、率直な意見、素朴な質問、そして違和感の指摘が、いつでも、誰もが気兼ねなく言えること」
単に「居心地がいい」「仲がいい」ということではなく、成果に向けて建設的な意見を言い合える状態を指すという点が重要です。
心理的安全性が高い状態
心理的安全性の4つの因子
本書では、日本企業1万チーム以上を調査した結果から、心理的安全性を構成する4つの因子を導き出しています:
| 因子 | 内容 | 具体的な行動例 |
|---|---|---|
| ①話しやすさ | 気兼ねなく発言できる雰囲気 | 会議で意見を言いやすい、雑談がしやすい |
| ②助け合い | 困った時に支援を求め、提供できる | 「助けて」と言える、サポートを申し出る |
| ③挑戦 | 新しいことに挑戦できる環境 | 失敗を恐れず試せる、学習機会がある |
| ④新奇歓迎 | 多様性や新しい視点を歓迎する | 異なる意見を尊重する、変化を受け入れる |
これらの因子を「行動」レベルに分解し、具体的に何をすれば高められるのかを示している点が本書の実践的な価値です。
本書の最大の特徴「心理的柔軟性」
本書の独自性は、「心理的柔軟性」という概念を重視している点です。
心理的柔軟性とは
「どんな感情や状況の中でも、自分にとって価値ある行動を選べる力」のこと。ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)という心理療法の中核概念です。
心理的安全性との関係
- 心理的柔軟性が高い人が多い組織 → 心理的安全性が高まりやすい
- 不安や恐れがあっても、価値ある行動(発言、挑戦、協力)を選べる
- 感情に振り回されず、建設的な行動を取れる
つまり、個人の心理的柔軟性が、チームの心理的安全性の土台になるという視点が本書の最大の特徴です。
読んで得られた新たな視点
「行動」に分解して考える発想
本書を読んで最も印象的だったのは、抽象的な概念を「行動」に分解するという発想です。
これまでの私の認識
- 心理的安全性=雰囲気やカルチャーの問題
- リーダーの人柄や性格に依存する
- 改善するのは難しそう
本書から得た視点
- 心理的安全性は「行動」の積み重ねで作られる
- 「増やしたい行動」「減らしたい行動」を明確にする
- 行動を変えるための「きっかけ」と「見返り」を設計する
実践例: 「話しやすさ」を高める行動設計
| 増やしたい行動 | きっかけ(先行条件) | 見返り(結果) |
|---|---|---|
| 会議で意見を言う | 「どう思いますか?」と個別に聞く | 「いい視点ですね」と肯定的フィードバック |
| 質問する | 「質問タイム」を明確に設ける | 質問に丁寧に答える、感謝を伝える |
この「行動」に分解して考える発想は、育児やチームマネジメントなど、あらゆる場面で応用できると感じました。
心理的柔軟性という概念
「心理的柔軟性」という概念は、本書で初めて知りました。
従来の考え方
- ネガティブな感情(不安、恐れ、怒り)は排除すべき
- ポジティブな感情を維持することが大切
心理的柔軟性の考え方
- ネガティブな感情があっても OK
- 感情を「受け入れ」つつ、価値ある行動を「選択」する
- 感情と行動を切り離して考える
具体例: 会議で意見を言う場面
| 従来の考え | 心理的柔軟性の考え |
|---|---|
| 「不安だから発言しない」 | 「不安はあるけど、チームのために発言しよう」 |
| 「恐れをなくしてから挑戦する」 | 「恐れはあるけど、成長のために挑戦しよう」 |
この視点は、育児における「イライラしながらも冷静に対応する」場面にも通じると感じました。感情を無理に抑え込むのではなく、感情を認めつつ、子どもにとって良い行動を選ぶという考え方です。
「ぬるま湯組織」との違い
本書で改めて意識すべきと感じたのは、心理的安全性と「ぬるま湯組織」の違いです。
誤解されがちなポイント
- 心理的安全性が高い ≠ 何でも許される
- 心理的安全性が高い ≠ 仲良しクラブ
- 心理的安全性が高い ≠ 厳しいフィードバックをしない
正しい理解
- 心理的安全性が高い組織は、むしろ建設的に意見を戦わせる
- 成果に向けて厳しいフィードバックをし合える
- 「快適さ」ではなく「健全な対立と協力」が特徴
心理的安全性×責任のマトリクス
| 責任が低い | 責任が高い | |
|---|---|---|
| 心理的安全性が高い | ぬるま湯組織(快適だが成果が出ない) | 学習する組織(健全な対立と高い成果) |
| 心理的安全性が低い | 無関心組織(諦めと停滞) | 不安組織(成果は出るが持続不可能) |
この整理により、「心理的安全性を高める=甘やかすこと」ではないと改めて認識できました。
子育て世代の仕事・育児・学びへの応用
本書の内容は、仕事だけでなく子育て世代の様々な場面で応用できると感じました。
リモートワークでのチーム運営
課題
- リモートワークでは対面より心理的安全性が低下しやすい
- 雑談が減り、気軽な質問がしにくい
- 表情や空気感が読みにくい
本書の考え方を応用した解決策
| 因子 | 具体的な行動 |
|---|---|
| 話しやすさ | オンライン会議の冒頭5分を雑談タイムに、チャットで気軽に質問できる文化 |
| 助け合い | 「困っていることありますか?」と定期的に聞く、Slackで「助けて」スタンプ |
| 挑戦 | 「まず試してみよう」と失敗を許容する発言、実験的な取り組みを奨励 |
| 新奇歓迎 | 「面白い視点ですね」と異なる意見を歓迎、多様な働き方を尊重 |
特に、リモート環境では意識的に「話しやすさ」を作る行動が必要と改めて感じました。
家庭内コミュニケーション
育児における心理的安全性の応用
本書の考え方は、夫婦間や親子間のコミュニケーションにも応用できます。
家庭内で「話しやすさ」を高める例
- 「今日どうだった?」と日常的に聞く習慣
- 相手の話を遮らず最後まで聞く
- 「それは大変だったね」と共感を示す
家庭内で「助け合い」を高める例
- 「手伝ってほしいことある?」と積極的に聞く
- 「疲れたから少し休ませて」と素直に言える
- お互いの負担を可視化して分担する
家庭内で「挑戦」を高める例
- 子どもの新しい挑戦を応援する
- 失敗しても「よく挑戦したね」と認める
- 親自身も新しいことに挑戦する姿を見せる
心理的柔軟性の応用
育児では、イライラや疲労感があっても、子どもにとって価値ある行動を選ぶ場面が多くあります。
- 「イライラしているけど、子どもの話は聞こう」
- 「疲れているけど、今日は一緒に絵本を読もう」
- 「不安だけど、子どもの挑戦を見守ろう」
この「感情を認めつつ、価値ある行動を選ぶ」という考え方は、育児のストレス軽減にも役立つと感じました。
自己学習と成長マインド
子育て世代の学びへの応用
仕事・育児・学びを両立する子育て世代にとって、自己学習の時間確保は大きな課題です。
心理的柔軟性を活かした学習習慣
| 課題 | 心理的柔軟性の応用 |
|---|---|
| 「時間がなくて勉強できない」 | 「時間は少ないけど、10分だけ読書しよう」 |
| 「疲れて本を読む気になれない」 | 「疲れているけど、1ページだけ読もう」 |
| 「完璧に理解できないから不安」 | 「完璧でなくても、まず読み始めよう」 |
心理的安全性を自分に対して作る
- 「完璧でなくてもいい」と自分に許可を出す
- 「失敗してもいい」と自分を受け入れる
- 「ゆっくりでも進んでいる」と自分を認める
本書の考え方は、組織だけでなく、個人の内面にも応用できると気づきました。
他の読者の評価
Amazon・読書メーターでの評価
Amazon評価: ★4.2(約600件のレビュー)
高評価レビューの傾向
- 「理論と実践のバランスが良い」
- 「日本企業の文脈に合わせた内容で実践しやすい」
- 「心理的柔軟性という新しい視点が面白い」
- 「行動分析学の手法が具体的で役立つ」
- 「知りたいことドンピシャでよかった」
- 「チームにも、対個人にも使える」
- 「理論と実践どちらもあり、すぐ取り入れられた」
企業での採用実績
本書は、多くの大手企業で研修教材として採用されています:
- 累計発行部数20万部突破(2025年6月時点)
- 日本の人事部「HRアワード2021」書籍部門 優秀賞受賞
- 多数の企業で組織開発研修に活用
企業からの評価
★総合評価
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 内容の充実度 | ★★★★★ | 理論と実践のバランスが良く、352ページの情報量は十分 |
| 実践しやすさ | ★★★★★ | 行動に分解する手法が具体的で、すぐに試せる |
| 新規性・独自性 | ★★★★★ | 心理的柔軟性という新しい視点が秀逸 |
| 読みやすさ | ★★★★☆ | 専門用語もあるが、図表やイラストで理解しやすい |
| 応用範囲の広さ | ★★★★★ | 仕事だけでなく、家庭や自己学習にも応用可能 |
| コストパフォーマンス | ★★★★★ | 1,980円で長期的に役立つ内容。十分に元が取れる |
読む前に知っておきたいポイント
この本が特に役立つ人
強くおすすめする人
- チームリーダー・管理職: 実践的なマネジメント手法が学べる
- リモートワーク従事者: オンライン環境での心理的安全性構築に役立つ
- 子育て世代: 家庭内コミュニケーション改善のヒントが得られる
- 自己成長に関心がある方: 心理的柔軟性を高める方法が学べる
読むタイミング
読み方のコツ
効果的な読み方
全体を通読してから、必要な章を深く読む
- まず全体像を把握
- 自分の課題に合った章を重点的に
小さな行動から試す
- いきなり全てを変えようとしない
- 1つの行動を変えることから始める
読書時間の目安
- 通読: 約5〜7時間
- 重要な章の精読: 約2〜3時間
- ワークシート記入: 約1〜2時間
おすすめの読書環境
CXコンサル視点での分析
顧客体験設計との共通点
CXコンサルとして、本書の手法は顧客体験(CX)設計と多くの共通点があると感じました。
CX設計と心理的安全性の共通点
| CX設計 | 心理的安全性 |
|---|---|
| 顧客の感情と行動を分析 | メンバーの感情と行動を分析 |
| タッチポイントごとに体験を設計 | 場面ごとに行動を設計 |
| フィードバックループで改善 | 行動観察とフィードバックで改善 |
行動変容のプロセス
CX設計でも心理的安全性でも、行動変容のプロセスは同じです:
Step1: 現状把握
- どんな行動が起きているか観察
Step2: 理想状態の定義
- どんな行動を増やしたい/減らしたいか明確化
Step3: 行動設計
- 行動を変えるための「きっかけ」と「見返り」を設計
Step4: 実践と検証
- 小さく試して効果を測定
Step5: 改善と継続
行動変容のデザイン
本書の「行動分析学」のアプローチは、顧客の行動変容をデザインするCX設計と全く同じ思考法です。
行動分析学の基本構造(ABC分析)
- A(Antecedent: 先行条件): 行動のきっかけ
- B(Behavior: 行動): 実際の行動
- C(Consequence: 結果): 行動の結果・見返り
CX設計での応用例
| A(きっかけ) | B(行動) | C(結果) |
|---|---|---|
| サイトで商品を見つける | カートに入れる | 送料無料のメッセージ表示 |
| メールで限定セールの案内 | サイトを訪問する | 特別価格で購入できる |
心理的安全性での応用例
| A(きっかけ) | B(行動) | C(結果) |
|---|---|---|
| 会議で「意見ある人?」と聞かれる | 意見を言う | 「いい視点ですね」と肯定される |
| 困っている様子を見られる | 「助けてください」と言う | すぐにサポートが得られる |
このように、本書の手法はCX設計やマーケティング、育児など、あらゆる「行動変容」が必要な場面で応用できると感じました。
まとめ
この本の最大の価値
『心理的安全性のつくりかた』の最大の価値は、抽象的な概念を具体的な「行動」に分解し、実践可能にしたことです。
本書の3つの柱
- 心理的安全性の4因子(話・助・挑・新): 何を目指すべきか明確
- 行動分析学の手法: どうやって実現するか具体的
- 心理的柔軟性の概念: 個人の内面から組織を変える
読む前と読んだ後の変化
| 読む前 | 読んだ後 |
|---|---|
| 心理的安全性=雰囲気の問題 | 心理的安全性=行動の積み重ね |
| リーダーの人柄次第 | 誰でも作れる、設計できる |
| 仕事の概念 | 仕事・家庭・自己成長に応用可能 |
個人的な読書体験総括
読んで良かった点
- 心理的安全性という概念を体系的に理解できた
- 「心理的柔軟性」という新しい視点を得られた
- 仕事だけでなく、育児や自己学習にも応用できる考え方を学べた
- 「行動」に分解する発想が、CX設計の仕事にも活かせる
日々の読書の中で出会えた良書
特定の問題を解決するために手に取ったわけではありませんが、読み進めるうちに「これは仕事にも育児にも使える!」と気づきが次々と生まれました。日々の読書習慣の中で、こうした良書に出会えることの価値を改めて感じました。
おすすめする理由
- チームマネジメントに携わる方には必読書
- 子育て世代にとっては、家庭内コミュニケーション改善のヒントが満載
- 自己成長に関心がある方には、心理的柔軟性を高める方法が学べる
- 日々の読書で新たな視点を得たい方には、深い学びが得られる
もし「心理的安全性」という言葉を聞いたことがあるけれど、きちんと理解していないという方がいれば、ぜひ手に取ってみてください。1,980円で、長期的に役立つ知識と視点が得られます。
仕事・育児・学びを両立する子育て世代にとって、この本から得られる考え方は、様々な場面で応用できるはずです。
一緒に心理的安全性の高い職場や家庭を作っていきましょう!


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