「計画って、立てられないこともあるよね」
先日、友人と飲んでいたときにそう言われました。
以前私が書いた計画とチェックポイントの記事を読んでくれての感想でした。
確かに、「計画を立てよう」と言われても目標がどこにあるかわからないと手が止まりますよね。
老後の年金はどうなるかわからない。定年が65歳か70歳かもわからない。インフレが進むとお金がどれだけ必要かもわからない。
仕事でも未経験の分野には「正解」がない。
でも、わからないから「とりあえず頑張る」にしてしまうのが一番まずい。
ITコンサルとして5社を渡り歩いてきた経験から言うと、
不確実な状況でも動けるのが「仮説と前提を置く」思考習慣です。
この記事では、ビジネスからプライベートまで使える「仮説・前提思考」の実践法を解説します。
「とりあえず頑張る」がうまくいかない本当の理由
計画とチェックポイントの記事でも書きましたが、
目標のない「頑張る」は3つの理由で失敗しやすいです。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| ① 振り返りができない | 何が良くて何が悪かったか分析できない |
| ② 状況把握ができない | 「うまくいっている」か「手遅れ」かの二択しか分からない |
| ③ 修正案が出ない | 問題の本質が見えないから、的外れな努力を続けてしまう |
友人が言った「計画が立てられないこともある」というのは正しいです。
でもそれは、「完璧な計画が立てられない」ということであって、
「仮説と前提を置いた暫定計画すら立てられない」ではありません。
「仮説」と「前提」とは何か
前提=「こうだと仮定する条件」
前提とは、まだ確認できていないことを、ひとまず「こうとして考える」という条件のことです。
例:老後の生活費は月25万円かかると仮定する
「本当に25万円かどうかわからない」でも、何も置かないと試算が始められません。
まず前提を置くことで、計算や計画が動き出すんです。
仮説=「こうなるだろうという予測」
仮説とは、前提に基づいて「おそらくこうなるだろう」と立てる予測のことです。
例:前提「月25万円必要」→ 仮説「定年時に3,000万円あれば年金もあるし20年は安心だろう」
仮説はあくまで予測なので、間違っていても構いません。
むしろ間違えた時に修正できるのが、仮説思考の強みです。
ビジネスでの実践例
面接・打合せで「わからない」を武器にする
コンサルの面接では、知らない業界や知識の話が出ることがあります。
そのとき「わかりません」で止まる人と、仮説と前提で乗り越える人に分かれます。
コンサル転職の面接評価記事でも書いたこの答え方が、評価される回答の典型です。
「その業界は未経験なので詳しくありませんが、〇〇という前提で考えると△△という仮説が立ちます。もし前提が間違っていたらご指摘ください。また、このプロジェクトに関わる場合、まず□□の業界レポートや◇◇のデータを調査し、××の観点から分析を始めると考えます」
このたった一言の中に、仮説思考の全てが詰まっています。
| 要素 | セリフ内の対応箇所 |
|---|---|
| 前提を置く | 「〇〇という前提で考えると」 |
| 仮説を立てる | 「△△という仮説が立ちます」 |
| 修正を受け入れる | 「前提が間違っていたらご指摘ください」 |
| 次のアクションを示す | 「□□を調査し××から分析を始める」 |
知らないことを「知らない」と認めながら、思考を止めない。
これがコンサルとして高く評価される姿勢であり、日常の打合せでも同じです。
Web会議が増えた今こそ、事前の仮説が差をつける
コロナ前は打合せ前後の雑談の中で自然と「相手の状況確認」ができていました。
でも今は開始と同時に本題、終わったら即退出。
相手の状況がわからないまま話が進むからこそ、事前に「今どういう状態か」を仮説で持っておくのが重要になってきています。
プライベートでの実践例:貯金・老後計画
「いくら貯めればいいかわからない」問題
老後に向けた貯金を始めようとすると、こんな不安が次々と出てきます。
- 年金制度は今より悪くなるだろう
- インフレが進んでお金の価値が下がるかもしれない
- 65歳定年が自分の時代には70歳以上になっているかもしれない
- そもそも何歳まで働くのかわからない
これ全部、「わからないから動けない」の典型例です。
でも、こういう人ほど「なんとなく不安」が消えず、未来の心配ばかりして今を楽しめなくなります。
今と未来のバランス記事で書いた「未来の不安を考えすぎて今を蔑ろにしてしまう友人」のようになってしまうんです。
前提を置いて「動ける状態」を作る
完璧な未来予測は誰にもできません。でも、前提を置くことはできます。
ステップ①:前提を決める(仮)
| 項目 | 前提(仮) |
|---|---|
| 退職年齢 | 65歳(後で修正可) |
| 老後の生活費 | 月25万円(後で修正可) |
| 老後期間 | 25年間(後で修正可) |
| 年金受給額 | 月15万円(後で修正可) |
ステップ②:仮説を立てる
「25万円 × 12ヶ月 × 25年 = 7,500万円必要」
「年金で15万円 × 12 × 25 = 4,500万円は賄える」
「差し引き3,000万円を自力で準備する必要がある」
ステップ③:逆算して今の行動を決める
「今35歳なら残り30年。毎年100万円の積立が必要」
「月8〜9万円の積立でOK」
数字が全部「仮」でも、行動の方向性が一気に見えてくるのがわかりますか?
そして大事なのは、この前提は定期的に見直せばいいということ。
- 「70歳まで働けそう」になれば期間を延ばす
- 「年金がもっと減りそう」なら積立額を見直す
- 「インフレが予想以上」なら目標額を上方修正する
仮説が間違っていること自体は問題ではありません。仮説がないまま動かないことが問題なんです。
仮説思考を実践するための3ステップ
ステップ1:「わからないこと」と「仮に置けること」を分ける
❌ 「老後の年金がどうなるかわからないから計画が立てられない」
✅ 「年金は不明だが、ひとまず今の制度ベースで月12万円と仮定する」
「わからないこと」をそのままにするのではなく、
「現時点でのベストな仮定」に変換するのが前提思考の起点です。
ステップ2:仮説に基づいて「最初の計画」を動かす
完璧な計画を待っていると、永遠に動き出せません。
「仮の前提に基づく暫定計画」で動き始めることが大切。
コンサルとして多くのプロジェクトで感じてきたのは、
「完璧な計画」より「修正できる動いている計画」の方が価値があるということです。
ステップ3:定期的に前提を見直して修正する
前提が変わったら計画も変えればいい。
- 半期に1回、老後計画の前提を見直す
- 四半期ごとに仕事の目標を仮説ベースで更新する
- 月1回、今月の行動が仮説を踏まえた計画に沿っていたか振り返る
これが計画とチェックポイントの記事で書いた「チェックポイント」の本来の意味です。
こんな人に特に読んでほしい
✅ 「目標が決まらないから計画が立てられない」と感じている人
✅ 老後のお金が不安だけど何から始めればいいかわからない人
✅ 仕事で未経験の分野に踏み込まなければならない場面がある人
✅ Web会議が増えて「とりあえず本題」になりがちな人
✅ 「完璧な答えを出してから動く」癖がある人
まとめ
仮説・前提思考の最大の価値は「不確実な状況でも行動できるようになること」。
老後の制度が変わるかもしれない。定年が延びるかもしれない。インフレが進むかもしれない。
それでも「現時点でのベスト仮定」を置いて動けば、何もしないよりずっと前進できます。
友人の「計画が立てられないこともあるよね」という言葉は正しい。
でもそれは「完璧な計画が立てられない」という意味であって、
「仮説と前提を置いた暫定計画さえ立てられない」という意味ではありません。
まず「仮の前提」を置いて動き始め、ズレたら修正する。
その繰り返しがビジネスでも、プライベートでも、確実に前進するための思考習慣です。
一緒に「とりあえず頑張る」から「仮説で動く」思考にアップデートしていきましょう!

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