新しいことを最速で学ぶ方法。コンサルが実践する週末学習法6ステップ

キャリア・スキル
新しいことを最速で学ぶ方法。コンサルが実践する週末学習法6ステップ

「来週から新しいプロジェクト、〇〇業界の知識が必要です」

金曜日の夕方、上司からこう告げられた時、あなたならどうしますか?

コンサルティング業界では、プロジェクトごとに異なる業界や企業の課題に取り組むため、短期間で新しい知識を習得する能力が求められます。製造業、金融、IT、小売、医療…。扱うテーマは多岐にわたり、その都度ゼロから学び直すことが日常茶飯事です。

私自身、これまで何度も「週末で基礎知識を身につける」という経験をしてきました。最初は途方に暮れましたが、試行錯誤の末に確立したのが、週末学習法6ステップです。

この方法を使えば、全く知らない業界でも、月曜日には基礎的な会話ができるレベルまで到達できます。

今回は、働き方・効率化シリーズとして、コンサルが実践する戦略的な学習法をご紹介します。

なぜ短期間での知識習得が必要なのか

コンサル業界の現実

コンサルティングファームでは、プロジェクトは通常3ヶ月~1年程度で終わります。

つまり、ある業界の知識を身につけたと思ったら、次はまったく違う業界のプロジェクトに配属される、ということが頻繁に起こります。

私の経験例:

  • 4月:製造業のDXプロジェクト
  • 7月:金融業界の業務効率化
  • 10月:小売業のCX改善
  • 1月:医療業界のデジタル化支援

各プロジェクトの開始前に、その業界の基礎知識、ビジネスモデル、主要プレイヤー、課題などを短期間で理解する必要があります。

コンサル以外の人にも役立つ

この学習法は、コンサルタント以外の方にも有効です。

こんな時に使えます:

  • 転職・異動で新しい業界に入る時
  • 新規事業の立ち上げで未知の領域を学ぶ時
  • 資格試験の勉強を始める時
  • 副業で新しいスキルを身につける時
  • 趣味で専門知識を深めたい時

「限られた時間で最大の成果を出す」ことが求められるあらゆる場面で活用できます。

週末学習法6ステップ

私が実践している学習法を、ステップごとに詳しく解説します。

前提:週末(土日)を使った集中学習

想定スケジュール:

  • 金曜夕方:来週から新プロジェクト決定
  • 土曜日:ステップ1~3(基礎固め)
  • 日曜日:ステップ4~5(深掘り・精読)
  • 平日以降:ステップ6(実務での継続学習)

ステップ1:初級者向けの本を1冊しっかり読む

目的: 全体像を把握し、基礎用語を理解する

やり方: その業界や業務を初めてやる人、または目指そうとしている就活生が読むような基礎の本を1冊選び、しっかりと読みます。

本の選び方:

  • Amazonで「〇〇業界 入門」「〇〇 基礎」と検索
  • レビュー数が多く、評価が高い本(星4以上)
  • 出版年が新しい本(できれば3年以内)
  • タイトルに「入門」「基礎」「はじめての」が入っている本

読み方のポイント:

  • 最初から最後まで通読する
  • わからない用語があれば、その都度メモ
  • マーカーや付箋を活用して重要箇所をマーク
  • 所要時間:3~4時間

実践例: 金融業界のプロジェクトが決まった時、『金融業界大研究』のような入門書を土曜午前中に読み切りました。銀行、証券、保険の違い、主要プレイヤー、ビジネスモデルの基礎を理解できました。

ステップ2:中級者~上級者向けの本を3~5冊ざっと流し読みする

目的: 多角的な視点を得て、重要なトピックを特定する

やり方: ステップ1で基礎を固めたら、次は中級者~上級者が読む本を3~5冊購入し、流し読みします。

本の選び方:

  • ステップ1の本の参考文献や「おすすめ本」
  • Amazonで関連書籍を検索
  • 著者が異なる本を選ぶ(多様な視点を得るため)
  • 実務家、学者、コンサルタントなど、立場が異なる著者

流し読みのコツ:

  1. 目次を最初に熟読(全体構成を把握)
  2. まえがき・あとがきを読む(著者の主張の核心)
  3. 見出しと太字部分を中心に読む
  4. 図表・グラフを重点的にチェック
  5. 詳細な説明は飛ばしてOK

所要時間: 1冊あたり30~60分、合計2~5時間

実践例: 金融業界なら、『金融DXの最前線』『銀行のビジネスモデル』『フィンテック革命』など、テーマの異なる本を3冊流し読み。各本で共通して触れられているトピックをチェックしました。

ステップ3:共通項をメモる

目的: 本質的な知識・重要トピックを特定する

やり方: ステップ2で読んだ3~5冊の本の中で、どの本でも同じ内容が出てきた場合は、それが重要な知識である可能性が高いです。

メモのポイント:

  • 複数の本で共通して登場するキーワード
  • 複数の著者が強調している課題や論点
  • 異なる本で同じ事例が紹介されている場合

メモの取り方:

  • デジタル(OneNote、Evernote、Notion、スマホのメモアプリ)
  • 手書き(ノート、付箋)
  • どちらでもOK、自分に合った方法で

実践例: 金融業界の本3冊を読んだ結果、以下が共通項として浮かび上がりました。

  • 「収益構造の変化」(金利低下による利ざや縮小)
  • 「デジタル化の遅れ」(レガシーシステムの課題)
  • 「顧客体験(CX)の重要性」

ほんの一部ではありますが、これらが業界の本質的な課題だと理解できました。

ステップ4:メモった内容を深掘りする

目的: 重要トピックの理解を深め、実務で使えるレベルにする

やり方: ステップ3でメモった共通項について、以下の方法で深掘りします。

深掘りの方法:

  1. 本を読み返す:該当箇所を精読
  2. Web検索:最新情報、事例、データを調査
  3. 業界レポート:無料で公開されているレポートを読む
  4. ニュース記事:直近の動向をチェック

所要時間: 1トピックあたり30分~1時間

実践例: 「金融業界のCX課題」について深掘り。

  • 本での説明を再確認
  • 各銀行のCX取り組みをWeb検索
  • 日経新聞のデジタル版で最新事例を確認
  • 金融庁のレポートで統計データを確認

これにより、「なぜCXが重要なのか」「具体的にどんな取り組みがあるのか」を実務レベルで理解できました。

ステップ5:最も合う本を1冊精読する

目的: 体系的な知識を確実に身につける

やり方: ステップ2で流し読みした3~5冊の中で、最も読みやすく、内容的にも納得できる本を1冊選び、しっかりと読み切ります。

選ぶ基準:

  • 文章が読みやすい
  • 自分の立場(実務家、学習者など)に合っている
  • 具体例が豊富で理解しやすい
  • 著者の主張に共感できる

精読のポイント:

  • 流し読みの時に飛ばした部分も含めて全て読む
  • 重要箇所は再度マーク
  • 疑問点があれば、その都度調べる
  • 読後に要約メモを作成

所要時間: 2~3時間

実践例: 3冊の中で、『金融DXの最前線』の本が最も実務的で読みやすかったため、これを精読。デジタル化の具体的な手法、成功事例、失敗事例まで詳しく理解できました。


ここまでが週末での準備

土日の2日間で、ステップ1~5を完了させます。この時点で、月曜日からのプロジェクトに必要な基礎知識は十分に身についています。


ステップ6:業務を進めながら継続学習

目的: 実務での疑問を解消し、知識を定着させる

やり方: プロジェクトが始まったら、実務の中で出てくる疑問点や深掘りが必要なテーマについて、必要に応じて追加で本を読みます

継続学習のポイント:

  • クライアントとの会話で出てきた専門用語を調べる
  • プロジェクトの課題に関連する本を読む
  • チームメンバーにおすすめの本を聞く
  • 週に1~2冊ペースで関連書籍を読み続ける

実践例: プロジェクト開始後、「API連携」という用語が頻出したため、『API設計の教科書』を追加で読みました。また、クライアントの業務システムについて理解を深めるため、『業務システム入門』も読破。

実務と読書を往復することで、知識が確実に定着していきました。

この学習法の3つのメリット

1. 偏った知識を避けられる

1冊だけだと…

  • 著者の主観や偏見に影響される
  • 一面的な理解に留まる
  • 業界の全体像が見えにくい

複数冊読むと…

  • 多角的な視点が得られる
  • 著者による見解の違いが理解できる
  • 業界の本質的な課題が浮かび上がる

2. 重要な知識を効率的に特定できる

複数の本で共通して登場する内容 = 本質的に重要

この法則により、何が重要で何がそうでないかを短時間で見極められます。

流し読みで全体を俯瞰してから、重要箇所を深掘りするため、無駄な時間を使いません。

3. 実務で使えるレベルまで到達できる

週末の集中学習 + 実務での継続学習

この組み合わせにより、単なる「知識」ではなく、実務で使える「スキル」として定着します。

実践時のポイント・注意点

本の選び方

初級本の選び方(ステップ1):

  • Amazonレビューで星4以上
  • 「わかりやすい」「初心者におすすめ」というコメント多数
  • 図解が豊富な本

中級~上級本の選び方(ステップ2):

  • 著者の肩書きを確認(実務家、学者、コンサルタント)
  • 目次を見て、自分の知りたいテーマが含まれているか確認
  • 出版年を確認(最新情報が必要な場合)

時間配分の目安

土曜日(6~7時間):

  • 午前(3~4時間):ステップ1(初級本精読)
  • 午後(3時間):ステップ2(中級本3冊流し読み)+ステップ3(共通項メモ)

日曜日(5~6時間):

  • 午前(2~3時間):ステップ4(深掘り調査)
  • 午後(2~3時間):ステップ5(1冊精読)

平日以降:

  • ステップ6(継続学習、週1~2冊)

流し読みのコツ

やってはいけないこと:

  • ❌ 最初から最後まで丁寧に読む(時間がかかりすぎる)
  • ❌ すべての内容を理解しようとする(完璧主義は禁物)

やるべきこと:

  • ✅ 目次を熟読して全体構成を把握
  • ✅ 見出しと太字だけを追う
  • ✅ 図表・グラフを重点的にチェック
  • ✅ 「重要そうだ」と思った箇所だけメモ

メモの取り方

おすすめのフォーマット:

【業界名】金融業界

【共通項】
1. 収益構造の変化
   - 出典:『本A』p.50、『本B』p.120、『本C』p.30
   - 内容:金利低下により利ざやが縮小、新たな収益源が必要

2. デジタル化の遅れ
   - 出典:『本A』p.80、『本B』p.200
   - 内容:レガシーシステムが足かせ、DX推進が急務

3. CXの重要性
   - 出典:『本A』p.150、『本B』p.180、『本C』p.90
   - 内容:顧客体験向上がロイヤルティに直結

このように、トピック、出典、要約をセットで記録すると、後で見返しやすくなります。

失敗例と改善ポイント

失敗例1:最初から専門書を読んでしまった

何が起きたか: いきなり上級者向けの専門書を読んだ結果、用語がわからず理解できない。時間だけが過ぎて挫折。

改善策: 必ず初級本から始める。基礎用語を理解してから中級本に進む。

失敗例2:1冊だけ精読して満足してしまった

何が起きたか: 1冊だけ読んで「理解した」と思い込み、プロジェクトに臨んだ。しかし、実際には著者の偏った視点に引きずられ、多角的な議論ができなかった。

改善策: 複数冊読むことで、多様な視点を得る。

失敗例3:流し読みを丁寧にやりすぎた

何が起きたか: 流し読みのはずが、気になる箇所を全部読んでしまい、1冊に2時間以上かかった。結果、3冊読めず。

改善策: タイマーをセットして、1冊30~60分を厳守する。詳細は精読の段階で読む。

実際の成功例

ケース1:医療業界のDXプロジェクト

状況:

  • 金曜夕方:医療業界のデジタル化プロジェクト決定
  • 医療業界の知識ゼロ

実践内容:

  • 土曜:『医療業界入門』精読 + 中級本3冊流し読み
  • 日曜:「電子カルテ」「遠隔医療」の深掘り + 『医療DX最前線』精読
  • 平日:プロジェクト開始、実務で出てきた「DICOM」「HL7」などを調べる

結果: 月曜日の初回ミーティングで、クライアント(病院関係者)と基本的な会話が成立。「医療業界に詳しいですね」と言われるレベルに。

ケース2:小売業のCX改善プロジェクト

状況:

  • 金曜夕方:小売業のCX改善プロジェクト決定
  • ECサイトの知識は多少あるが、実店舗については未経験

実践内容:

  • 土曜:『小売業の教科書』精読 + CX関連本3冊流し読み
  • 日曜:「OMO(Online Merges with Offline)」「顧客ロイヤルティ」の深掘り
  • 平日:競合他社の店舗を実際に視察、本で学んだことを確認

結果: 1週間後のプレゼンで、「OMO戦略による顧客体験向上」を提案。クライアントから高評価を獲得。

おすすめ書籍:学習法を学ぶ

この週末学習法をさらに深めるための、おすすめ書籍を紹介します。

1. 『レバレッジ・リーディング』本田直之

こんな人におすすめ:

  • ビジネス書の多読法を学びたい
  • 投資としての読書を意識したい
  • 読書から最大のリターンを得たい

1日1冊のビジネス書を読む「多読」の重要性と、そのための具体的な方法論を解説。速読ではなく、戦略的な多読がテーマです。

2. 『読書は1冊のノートにまとめなさい』奥野宣之

こんな人におすすめ:

  • 読んだ本の内容を忘れてしまう
  • メモ・ノート術を学びたい
  • 読書を知識として定着させたい

読書メモの取り方、情報の整理方法を詳しく解説。アナログ(ノート)でもデジタルでも応用できる内容です。

3. 『アウトプット大全』樺沢紫苑

こんな人におすすめ:

  • インプットだけで終わってしまう
  • 学んだことを実務で活かせない
  • 知識を定着させたい

インプットとアウトプットの黄金比率は「3:7」。読書(インプット)だけでなく、実践(アウトプット)の重要性を科学的に解説。

★総合評価:週末学習法6ステップ

10年以上のコンサル経験で培った学習法を、6項目で評価します。

評価項目評価コメント
効率性★★★★★週末2日間で基礎から実務レベルまで到達可能。時間対効果が非常に高い
再現性★★★★★誰でも実践可能。特別なスキルや訓練は不要。本を買って読むだけ
汎用性★★★★★あらゆる業界・分野に応用可能。資格試験、転職、副業など幅広く使える
深度★★★★☆専門家レベルには到達しないが、実務で通用する基礎知識は確実に習得可能
コスパ★★★★★本代5,000円~10,000円程度で大きなリターン。投資効率が極めて高い
継続性★★★★☆週末の集中学習は負担が大きいが、一度習慣化すれば強力な武器になる

総合評価: ★★★★★(4.7 / 5.0)

短期間で最大の成果を出す学習法として、自信を持っておすすめできます。特に、コンサルタント、新規事業担当、転職者など、「限られた時間で新しいことを学ぶ必要がある」すべての人に有効です。

まとめ:週末で基礎を固め、実務で深める

「来週から新しいプロジェクト」という急な状況でも、この週末学習法6ステップを使えば、自信を持って臨めます。

この学習法の最大の価値は、短期間で実務レベルの知識を習得できることです。

6ステップの振り返り:

  1. 初級本を1冊精読(基礎固め)
  2. 中級本を3~5冊流し読み(多角的視点)
  3. 共通項をメモ(本質的知識の特定)
  4. メモ内容を深掘り(理解の深化)
  5. 最も合う本を1冊精読(体系的知識の獲得)
  6. 実務で継続学習(知識の定着)

個人的な体験総括:

  • 10年以上、新しいプロジェクトごとにこの方法を実践
  • 医療、金融、製造、小売、IT…様々な業界で活用
  • 週末の2日間で「月曜から会話できるレベル」に到達
  • 実務と読書を往復することで、知識が確実に定着

こんな方に特におすすめ:

  • 転職・異動で新しい業界に入る方
  • 新規事業の立ち上げに関わる方
  • 資格試験の勉強を始める方
  • コンサルタントを目指す方
  • 効率的な学習法を探している方

一緒に、限られた時間で最大の成果を出す学習習慣を身につけていきましょう!


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