「管理職になりたくない」──年度末が近づき、昇格の打診を受け始める時期に、そう感じている方も多いのではないでしょうか。
実際、日本能率協会マネジメントセンターの調査では、一般社員の約77.3%が管理職を望まず、20代では77%、30代では55.8%が「出世したくない」と回答しています。
しかし、ITコンサルとして10年以上働き、初めてマネージャーになった時の苦労を振り返ると、出世を避け続けることは、給与面だけでなく「意思決定スキル」という重要な能力の成長機会を失うことになると強く感じています。
この記事では、年度末の昇格シーズンを前に、「出世したくない」と感じている方に向けて、意思決定スキルの重要性と、長期的なキャリア戦略について実体験をもとに解説します。
なぜ「出世したくない」人が増えているのか?
統計データから見る現状
近年、若手社員を中心に「出世したくない」という声が急増しています。
主な調査結果:
- 20代の77%が管理職を望まない(ニッセイ基礎研究所)
- 全年代の約58.5%が出世したくないと回答(doda調査)
- 社会人2年目では52.8%まで増加(入社時43.6%から10ポイント上昇)
出世を避ける主な理由
年代別で見ると、出世したくない理由にも特徴があります。
年代別トップ理由:
- 20代: 「上司としての責任を負いたくないから」(42.9%)
- 30代: 「リーダーシップやマネジメントが苦手だから」(38.4%)
- 40代: 「高いプレッシャーやストレスに耐えられないから」(36.3%)
- 50代: 「上司や管理職の仕事が魅力的に感じられないから」(32.9%)
他にも、「プライベートを大事にしたい」「業務量が増える」「収入と釣り合わない」といった理由が上位に挙がっています。
出世を避けることの「見えないリスク」
1. 意思決定スキルが育たない
出世を避け続けると、作業者としてのスキルは伸びても、マネージャーとして必要な「意思決定スキル」を学ぶ機会が失われます。
作業者として働いている間は、基本的に以下のような働き方が中心になります:
- マネージャーから作業を依頼される
- 指示に従って作業をこなす
- 判断が必要な時はマネージャーに相談して決めてもらう
この働き方は「その場は楽」ですが、意思決定の経験が積めないため、長期的にはキャリアの幅を狭めることになります。
2. 初めてマネージャーになった時の苦労
私が初めてマネージャーになった時、大変だったことの上位に挙げられるのが「意思決定」でした。
作業者時代との違い:
- 作業者時代: 自分の作業は細部まで把握し、必要な情報をマネージャーに報告して判断を仰ぐ
- マネージャー: 複数名の部下の作業すべてを細かく把握できない状況で、限られた情報をもとに判断する
さらに、マネージャーになると以下のような追加情報を踏まえた判断が求められます:
- プロジェクト全体の方針
- 会社の役職者しか知らない情報
- 他チームとの調整事項
- リソース配分の優先順位
最初の頃は、こうした判断の難しさと精神的負担の大きさに驚きました。
部下には必要以上に情報を報告・共有してもらってから判断したり、決定まで時間がかかって待たせたりと、「自分が部下の立場だったら使えない上司と感じる」ような動きをしていたと思います。
3. 意思決定スキルは経験でしか育たない
しかし、この経験はとても大切だったと今では確信しています。
意思決定スキル、特に重要な判断に関しては、経験を積んでいかないと以下のポイントが身につきません:
- どれくらいの情報量があれば判断できるのか?
- どの程度のリスクまで許容できるのか?
- 決断までにどれくらいのスピード感が求められるのか?
- 不確実な状況でどう決断するのか?
これらは座学や本で学べるものではなく、実際に責任を持って判断し、その結果を受け止める経験を通じてのみ習得できるスキルです。
4. 「作業スキル低下」vs「新しいスキル獲得」
「出世すると会議ばかりで作業することが減り、スキルが低くなる」という話を聞くことがあります。
しかし、私は出世は違うスキルを学ぶ場だと考えています。
マネージャーになって得られるスキル:
- 幅広い知識: 様々な会議に出席し、意思決定を行うことで、作業者時代とは違う幅広い知識が求められる
- 全体最適の視点: 自分のタスクだけでなく、チーム全体・プロジェクト全体を見る視点
- 交渉・調整力: 他部署との調整や、上層部への説明・提案
- リスク管理: 複数の選択肢からリスクを評価して決断する力
これらは次のキャリアステップや転職でも評価される重要なスキルです。
出世を断り続けることの長期的リスク
1. 社内での立場が悪くなる
出世を断ったり、真剣に仕事をせず「クビにならない程度」で働いていると、以下のような問題が生じる可能性があります:
- やる気のある後輩が上司になり、やりにくさを感じる
- 40歳を超えても昇格しない場合、20代の若手社員から「無能な人」という目で見られる
- 人事評価が下がり、減給や早期退職の対象になる可能性
2. 転職市場での評価が下がる
もし将来的に転職を考えた場合、全力で仕事をしてこなかったことが致命的な弱点になります。
転職市場では、以下の点が評価されます:
- プロジェクトでの成果
- マネジメント経験
- 意思決定の経験
- リーダーシップの実績
出世を避け続けた場合、これらのアピールポイントが不足し、良い転職先が見つからないリスクがあります。
3. 「正当な理由なき昇進拒否」は懲戒対象になることも
法的な観点でも、労働契約や就業規則に昇進・昇格の記載がある場合、正当な理由なく拒否を続けると業務命令違反として懲戒処分の対象になる可能性があります。
単純に「責任が嫌だから」という理由では、法的にも会社からの評価的にもリスクがあることを認識しておく必要があります。
「出世したくない」なら、環境を変える選択肢も
ここまで出世の重要性を説明してきましたが、そもそも「どうしても出世したくない」と感じる業界や会社で働き続けること自体が、時間の無駄だと私は考えています。
週5日、1日8時間をどう過ごすか?
私たちは週5日、1日あたり8時間も働きます。その時間を、出世したいと思えない環境で過ごすのはもったいないのではないでしょうか。
もし今の会社や業界で出世したくないと感じているなら:
- その理由を深掘りする(会社の体質?業界の将来性?上司の姿?)
- 出世したいと思える業界・会社に転職することを検討する
転職エージェントの活用
転職を考える際には、転職エージェントの活用が効果的です。
私自身、これまでのキャリアで転職エージェントを活用し、自分の市場価値を客観的に把握し、キャリアアップを実現してきました。
転職エージェント活用のメリット:
- 客観的な市場価値の把握
- 非公開求人へのアクセス
- 職務経歴書・面接対策のサポート
- 年収交渉の代行
詳しくは以下の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
出世は「責任と給与」だけで判断しない
出世の本質は「スキルアップの機会」
出世を考える際、多くの人は以下の2点だけで判断しがちです:
- 責任の重さ
- 給与の増加額
しかし、出世の本質は「意思決定スキル」というキャリア全体を通じて役立つスキルを獲得する機会だと考えるべきです。
長期的なキャリア視点で考える
5年後、10年後の自分を想像してみてください:
- 40歳になっても作業者として、若手と同じような仕事をしている姿
- マネジメント経験があり、幅広い視点で組織を動かせる人材になっている姿
どちらの方が、キャリアの選択肢が広く、市場価値が高いでしょうか?
答えは明白です。
こんな人は「出世」を前向きに検討すべき
以下のような方は、出世を前向きに検討することをおすすめします:
✅ 出世を検討すべき人
- 将来的に転職を考えている人
- キャリアの選択肢を広げたい人
- 年収を中長期的に上げたい人
- 幅広いビジネススキルを身につけたい人
- 同じ作業の繰り返しに飽きてきた人
- 若手の頃から「いつかは管理職」と考えていた人
★総合評価:出世の価値
| 評価項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 意思決定スキルの習得 | ★★★★★ | 作業者では絶対に得られない経験。キャリア全体で活きる |
| 長期的な年収への影響 | ★★★★☆ | 短期的には残業代減少もあるが、5-10年スパンでは大幅増 |
| 転職市場での評価 | ★★★★★ | マネジメント経験は転職で非常に高く評価される |
| 知識・視野の広がり | ★★★★★ | 作業者時代とは比較にならないほど幅広い知識が必要 |
| 精神的な負担 | ★★☆☆☆ | 初期は大きな負担。経験を積むことで慣れていく |
| 職場での達成感 | ★★★★★ | 出世をするということは、職場で認められていることの一つの証でもあるので、達成感もあると思います |
総合評価: ★★★★☆(4.3/5.0)
出世というのは短期的な負担はあるが、長期的なキャリア価値は非常に高いと思います。
まとめ:今と未来のバランスを考える
年度末を迎え、昇格の打診を受ける方もいるでしょう。
「管理職になりたくない」という気持ちは、責任の重さやプライベートとのバランスを考えれば自然なことです。
しかし、出世を避け続けることは、給与面だけでなく「意思決定スキル」という重要な能力の成長機会を失うことになります。
この記事のポイント:
- 77%の若手社員が管理職を望まない現状
- 意思決定スキルは経験でしか育たない
- 出世を避けることの長期的なキャリアリスク
- 「出世したくない会社」なら、環境を変える選択肢も
- 出世は「スキルアップの機会」として捉えるべき
もし今の会社・業界で出世したいと思えないなら、出世したいと思える環境に転職することも一つの選択肢です。
一緒に、今と未来のバランスを考えながら、後悔しないキャリアを築いていきましょう!

コメント